下町・ライ通りの見どころ(タリン旧市街)

このページでは、タリン旧市街の下町・ライ通りにある聖オレフ教会、3人兄弟、フック・ハウス、自然博物館、工業デザイン博物館などをご案内します。 ライ通りにはかつてスカンジナビア商人たちの居住区があり、彼らが建てた「世界一の塔」が、今も異彩を放っています。

タリン旧市街・ライ通りの地図

聖オレフ教会(オレヴィステ教会)

ラボラトーリウミ通りの終点はTolli通りに続いていて、まっすぐ行くとピック通りの「三姉妹」です。 Tolli通りに入らずに右折すると、ライ(Lai)通りです。東のヴェネ通り、中央のピック通りと並ぶ旧市街の三大メインストリート(と勝手に呼んでいます)。訳すと広小路ですが、この辺りはまだ普通の広さです。 このライ通りを少し南に行った所に、下町北部のランドマーク・聖オレフ教会(オレヴィステ教会、Oleviste kirik)があります。 このゴシック様式の教会は13世紀中頃、この辺りに住んでいたスカンジナビア商人たちのために建設されました。 尖塔の高さは124メートル。タリンにはのっぽな塔が少なくありませんが、どれもこの尖塔にはかないません。 中世には159メートルの高さを誇り、1549年から1625年までの間、この尖塔は何と世界一高い建造物だったそうです。東京タワーの高さが333メートルで、エッフェル塔が324メートルであることを考えると、中世にその半分近くのタワーを建てた技術力は大したものです。

もっとも、高すぎるのが仇になってしばしば雷が落ち、うち3回は完全に倒壊してしまいました。その度に再建や修復を繰り返して、結局現在の高さになりました。 ソ連時代には、この尖塔はKGBの無線塔としても使われました。 教会の名前は、市民の願いを聞いて世界一の塔を建てた巨人「オレフ」に由来するという話があります。その伝説によると、巨人は「報酬はたんまり頂くが、もし自分の名前が分かったらほぼ無報酬でいい」と約束していました。市民たちは巨人の妻が歌う子守唄から名前をつきとめ、塔がほぼ完成した頃、てっぺんに十字架を取り付けようとしていたオレフの名前を呼びます。オレフは驚いて塔から落ち、その体は石と化してしまいました。市民たちは巨人の運命を哀れんで「オレフ」を教会の名前にしたとか・・・ 実際には、「聖オレフ」という名前はこの教会に祀られているノルウェーの「聖王」オーラヴ(オレフ)2世に由来します。 オーラヴ2世は11世紀はじめのノルウェー国王ですが、北海帝国を打ち立てたデンマーク王・カヌート大王に敗れて戦死しました。史実を見る限りは侵略と略奪を繰り返した苛烈な王で、なぜ「聖王」になったのかよく分かりません。彼がノルウェーのキリスト教化を進めたことが、後に王朝を打ち立てた子孫によって伝説化され、スカンジナビアの人々が崇めるようになったというのが通説のようです。 4月から10月までの間は尖塔に登ることができ、下町はもちろん、山の手やタリン港の眺望スポットになっています。

住所:Lai通り 50番地 開館時間: 午前10時~午後6時(4月~6月、9月~10月) 午前10時~午後8時(7月~8月)

3人兄弟

「聖オレフ教会」を過ぎるとライ通りは名前の通りだんだん広くなってきます。 ライ通り38番地から40番地には、「三人兄弟」と呼ばれる3つの中世住宅が軒を連ねています。デザインが男性的なことから、ピック通りの「3人姉妹」にちなんで「3人兄弟(スリーブラザーズ)」と名付けられました。

フック・ハウス

「3人兄弟」の斜向かいのライ通り29番地には、住宅の前に2本の菩提樹が繁っています。この菩提樹には、ロシアのピョートル大帝にまつわる話が伝わっています。 ピョートル大帝が若いころお忍びで外国を視察していたことはよく知られていますが、当時はまだスウェーデン領だったタリンでも、商人としてブラックヘッド・ギルドに属していました。ある時、ピョートルは何故かこの家の前で眠ってしまったことがありました。 その後、大北方戦争でスウェーデンに勝利したピョートル大帝はエストニアを手に入れます。彼自身が若いころを懐かしんで命じたのか、誰かが勝手にやったのかは分かりませんが、昔の昼寝を記念して、彼の頭があったところと足があったところにそれぞれ菩提樹が植えられたとのこと。 ピョートルはかなりの大男だったそうですが、この菩提樹の幅が身長だとしたら、いくらなんでも大きすぎですね。

自然博物館

「自然博物館(Loodusmuuseum)」は、菩提樹があるフック・ハウスのすぐ左隣にあります。トンネルをくぐって中庭に入ると、その右奥に入り口があります。 バルト海などに生息する魚などが展示されています。

インダストリアルアートとデザインの博物館

ライ通りを南に進んで、Aida通りとのT字路を過ぎた辺りに、壁が紅白二色に彩られた建物があります。内部は「エストニアの工業芸術とデザインの博物館(Eesti Tarbekunsti- ja Disainimuuseum)」です。 様々なデザインの商品ラベルやクリスタル・ガラスの工芸品、革製品、アクセサリーなどが展示されていて、お土産としてエストニアの手工芸品をお土産として買う前に目を肥やしておくことができます。 ライ通りを最後まで進むとNunne通りにぶつかり、近くには山の手に続く「長い足」の入り口があります。ここはピック通りの起点でもあります。ラエコヤ広場に行く場合は、ピック通りを少し東に行ってから左折するか、Voorimehe通りの狭い路地を抜けます。

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