高野山周辺のドライブコース-紀伊山地北部の史跡めぐり-
弘法大師・空海が開創した高野山の魅力は、世界遺産の伽藍群や奥の院だけではありません。高野山の周辺にも、空海ゆかりの名所や紀伊山地の四季の風景を堪能できる観光スポットがたくさんあります。 電車で高野山に行って、「天空」など観光列車の車窓から楽しむのもいいですが、自家用車やレンタカー、バイクで高野山に向かえば、壇上伽藍や奥の院、宿坊に向かう道中でも、周辺の見どころも思う存分堪能できます。 このページでは、特におすすめのドライブコースを、観光スポットへの行き方や、名所の背景説明とともにご案内します。出発地は、高野山の周辺にある高速道路のインターチェンジや周辺の温泉地などです。 大阪から車で高野山へのアクセス方法については別ページで解説していますが、高野山に近いエリアの詳細なルートについては、以下のページ・ナビゲーションから気になる項目を確認した上で、経路を自由に組み合わせて、ドライブ旅行やツーリング、サイクリング、タクシー観光などのプランを立ててみてください。
高野山の周辺エリアってどんなところ?
このコーナーでは、高野山周辺エリアの特徴や歴史について解説します。ドライブ情報や見どころなどを先に確認したい方は、PAGE NAVI(ページ内メニュー)に戻ってコースを選んでください。
紀伊山地の北部は、古代から「山の神」が鎮座する聖域として信仰されてきたエリアです。高野山の周辺エリアもそんな山岳信仰の聖地でしたが、弘法大師・空海が密教の聖地として「高野山」を開創してからは、真言密教と修験道を信仰する人たちの理想郷となり、一大宗教都市に生まれ変わりました。 さらに高野山は、朝廷や貴族、武士たちからの寄進を受け、広大な荘園を支配するようになります。戦国時代の「高野山領(高野山の寺領)」は17万石にものぼりました。 17万石といえば、関ヶ原の戦いに参加した代表的な大名たちとあまり変わりません(石田三成:19万石、小西行長:20万石、福島正則:20万石、黒田長政:18万石、細川忠興:18万石、浅野幸長:16万石、蜂須賀至鎮:18万石)。 高野山真言宗の総本山・金剛峯寺は、戦国大名たちにも引けを取らない勢力を誇った「仏教の王国」だったのです。その王国の政治的な首都「高野政所」は、高野山の北麓にある九度山におかれていました(女人高野・慈尊院)。 高野山の周辺エリアでは今でも、その九度山をはじめ、仏教王国の繁栄を物語る史跡をあちこちで見ることができます。また、高野山よりさらに山奥に入っていくと、空海が開創する以前、山岳信仰の聖地だった頃の面影を残す風景にも出会えます。 さらに南に進むと、「日本三美人湯」のひとつ龍神温泉や熊野本宮大社に行くこともできます。 高野山と並んで世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産として登録されている「熊野三山」や「吉野・大峯」と合わせて、紀伊山地の一帯をのんびりドライブしてみるのもいいかも知れません。
和歌山市から高野山へ
まずは、和歌山市内から高野山に直行するコースを簡単にご紹介します。高野山の麓までは、紀の川沿いを橋本方面に向かうことになります。 高速利用の場合、京奈和自動車道でかつらぎ西ICへ。そこから県道125号を経由して国道480号へ。 一般道の場合は、県道9号、県道13号などを経由し、かつらぎ町で国道480号に入ります。
かつらぎ町から高野山までの国道480号を使った道順については、次の項目でご説明します。
かつらぎ西ICから高野山(大門)へ
ここからは、高野山周辺のドライブコースと周辺の見どころをご案内します。まずは、大阪市や和歌山市から高野山に行くメインルートのひとつ「国道480号」を通るコースです。 途中で寄り道して観光するというよりも、高野山に早く着きたい場合におすすめの直行プランになります。
旅の出発地は京奈和自動車道(けいなわじどうしゃどう)のかつらぎ西IC。京奈和自動車道は、京都、奈良、和歌山を結ぶ高規格道路で、和歌山県内・奈良県内は無料区間となっています。 関西国際空港など大阪府南西部から高野山に行く場合や、和歌山県内から高野山に行く場合は、このかつらぎ西ICで降りるのが便利です。大阪市などから国道480号の鍋谷峠道路・父鬼バイパスを通って和歌山県に入ってきた場合も、かつらぎ西ICのすぐ近くを通ります。 ノンストップでの所要時間の予想は、30分前後です。 Google Map:かつらぎ西ICから高野山大門
かつらぎ西ICから笠田東へ
かつらぎ西ICを出ると(または国道480号で鍋谷峠を越えてくると)、かつらぎ町笠田の町並みに入ります。
笠田は、紀の川に沿って和歌山と奈良方面を結んでいた大和街道沿いに発達した宿場町。街道筋には古い町並みが残っています。
笠田東から星山へ
その旧大和街道を越えて、国道480号を進みます。「笠田東」の交差点を右折して南に向かい、紀の川を渡ります。
紀の川を渡ると、いよいよ「高野山」の歴史的な領域に入っていきます。国道480号の東側には、世界遺産の構成資産でもある高野山町石道や三谷坂などの「高野参詣道」があります。
星山から矢立へ
かつらぎ町星山にある交差点を左折して県道4号線を東に進むと、世界遺産で紀伊国一宮の丹生都比売神社(にうつひめじんじゃ)がある「天野の里」に立ち寄ることもできます。 もっとも、丹生都比売神社は、高野参詣道の「三谷坂」に沿って行く紀北かつらぎICから大門へ(丹生都比売神社経由)のコースを通っていく方が、高野山の歴史を順にたどることができます。 高野山に直行する場合は、星山の交差点を直進して引き続き国道480号を進みます。
梨子ノ木峠口、花坂西の交差点を経由して、矢立(やたて)の交差点で高野山町石道と合流します。
矢立から大門へ
矢立から高野山までは、高野山町石道に沿って進みます。高野山の表玄関、大門まであと少しです。
紀北かつらぎICから大門へ(丹生都比売神社経由)
次は、歴史が好きな方におすすめのコースをご紹介します。世界遺産の神社や参詣道に立ち寄りながら、空海が開創するよりも前からの高野山の歴史にふれることができます。
スタート地点は京奈和自動車道の紀北かつらぎICです。大阪から国道480号を通って和歌山県に入った場合も、この近くを通ります。 紀の川の南側は、国道480号よりも狭い山道が多くなります。走行時間の予想は50分前後です。 Google Map:紀北かつらぎICから大門(丹生都比売神社経由)
紀北かつらぎICから丹生酒殿神社へ
紀北かつらぎICを出たら、JR和歌山本線の大谷駅の近くを通って南に進みます。紀の川を渡った先で左折し、丹生酒殿神社を目指します。
丹生酒殿神社(にうさかどのじんじゃ)は、国の史跡であり世界遺産でもある「高野参詣道」のひとつ、「三谷坂」の起点にある神社です。この丹生酒殿神社も世界遺産の登録資産となっています。 この辺りには、「丹生酒殿神社」に加えて「丹生都比売神社」「丹生官省符神社」と「丹生」がつく神社が多いのですが、この「丹生」という言葉は高野山の歴史にとってとても深い意味があります。詳しくは丹生都比売神社のページで解説します。 丹生酒殿神社のそばにある「榊山」は、「丹生都比売神社」の祭神である「丹生都比売大神」の最初の降臨地とされています。その際、地元の神様(竈門明神)が酒を造ってもてなしたことから、「酒殿神社」と名づけられたそうです。 丹生都比売大神は、御子神の高野御子大神などを引き連れて榊山に降り立ち、各地を巡って農耕の技術などを伝えた後に、今の丹生都比売神社がある「天野の里」に腰を落ち着けました。 この伝承から、丹生酒殿神社は丹生都比売神社の元宮であり、この一帯の有力者だった丹生一族の最初の拠点だったとも考えられています。 渡来系の丹生一族は、土着の人々に大陸の技術を伝えながら、勢力を拡大していったのでしょう。「大陸の技術」はその後の高野山の歴史を考える上でも重要なキーワードになります。 「丹生都比売神社」は高野山の歴史が始まった場所。その「丹生都比売神社」の歴史が始まったのが「丹生酒殿神社」だったとすると、この神社の裏手にある「榊山」こそが「高野山信仰」の発祥の地だったのかも知れません。
丹生酒殿神社から丹生都比売神社へ
丹生酒殿神社からは、世界遺産の「高野参詣道」のひとつ、「三谷坂」に沿った道を通って丹生都比売神社を目指します。
高野山の表参道である高野山町石道は九度山がスタート地点となっていますが、平安時代までは、この丹生酒殿神社から「三谷坂」を通って、丹生都比売神社の先で町石道に合流するルートが、高野山の表参道だったようです。
丹生都比売神社
丹生都比売神社(にうつひめじんじゃ、にふつひめじんじゃ)は紀伊国一宮であり、高野山信仰の原点ともいえる場所。少し歩けば空海が拓いた表参道、高野山町石道にも行けるので、「天野の里」はおすすめの観光スポットです。
丹生都比売神社は「天野大社」とも呼ばれ、水の女神であり、古代に「丹(辰砂、硫化水銀)」を採掘した渡来系の一族「丹生氏(にゅうし)」の氏神でもあった「丹生都比売神」を祀っています。 実はこの神社は、紀伊国一宮であるだけでなく、高野山の「原点」とも言える非常に重要な史跡。詳しくは以下のリンク先にまとめてあります。
「丹生都比売神社」のページ内リンク
丹生都比売神社から大門へ
丹生都比売神社からは、高野山町石道に並行した道を南に進みます。
梨子ノ木峠口の交差点で国道480号に合流します。その後、花坂西、矢立を経由して高野山の表玄関、大門に向かいます。
高野口ICから高野山へ(九度山経由)
丹生都比売神社と並び、高野山の歴史を知るのに欠かせない九度山を経由するコースです。「女人高野」とも言われた慈尊院や真田庵などに立ち寄った後、高野山町石道の東側を南下して大門を目指します。
橋本ICから大門へ
奈良県方面、または河内長野方面(高野街道)から高野山に行くメインルートのひとつです。 名古屋方面から高野山に車で行く場合も使えます。もっとも、山間部に入ってからの道は国道480号の方がいいので、多少遠回りになっても紀北かつらぎIC→国道480号のコースを使うほうが早く到着できる可能性が高いです。
京奈和自動車道の橋本ICから南に進み、紀の川を渡った後は、眺望がよく、走りやすい「紀の川フルーツライン」を走ります。 九度山から高野山までの区間は、カーナビによってはこれとは別のルートが表示されます(以前はGoogleマップでも表示されていました)。そのルートは距離でいうと最短ですが、すれ違いが困難な林道です。 林道に入らないようにするためには、九度山の南にある「赤瀬橋」の交差点付近で左折せず、そのまま国道370号を直進します。高野下駅の横を通過するようにすれば大丈夫です。その後もしばらくは南海高野線に沿って進みます。
橋本ICから奥の院へ(玉川峡経由)
滝や清流などの渓谷美を楽しみながら、高野山の裏側にあたる西側(奥の院サイド)からアクセスするコースです。ただし、道は狭いので注意が必要です。
十津川から高野山へ
独特の歴史と文化を持つ十津川村を出発し、南北朝時代の史跡などを見ながら紀伊山地を縦断するルートです。
国道168号線で十津川温泉を北上し、奈良県五條市の大塔町で左折。その後は県道53号を西に進み、高野山を目指します。 紀伊半島の南にある熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)から高野山に行く場合も、を経由して北上するこのルートが使えます。
龍神温泉から高野山へ(龍神スカイライン経由)
「日本三美人の湯」に数えられる龍神温泉を出発し、和歌山県と奈良県の県境に沿った「龍神スカイライン」からのパノラマを見ながら高野山を目指します。
こちらも、十津川を経由する経路とは別に、熊野古道や熊野三山から高野山に向かうルートとして使えます。
有田ICから高野山へ
紀伊山地を西側から横断して高野山を目指すコース。「次の滝」「蔵王橋」「あらぎ島」などの見どころを経由します。キャンプ場やスポーツ施設などがある「花園グリーンパーク」でゆっくりしていくのもおすすめです。
海南東ICから高野山へ
こちらも紀伊山地を横断するコースです。南の有田ICからのコースよりも有名な見どころは少ないですが、渓谷美などを堪能できるルートになります。