高野山の駐車場を徹底ガイド!-無料・有料・臨時駐車場の詳細地図-
高野山には電車とケーブルで行くこともできますが、荷物が多い場合や周辺のドライブも楽しみたい場合は、大阪や名古屋などから車で行くのが便利です。 高野山の観光スポットを車で見て回る場合、どこに車を駐車すればいいでしょうか? 宿坊などにも駐車スペースはあるので、高野山に泊まる場合はそこに車を置いて、徒歩や路線バスで移動するという方法もあります。 しかし、日帰りで定番コースを巡る場合や、宿坊などから離れた見どころに車で行きたい場合は、観光客にも開放されている駐車場を利用することになります。 目次
高野山の駐車場マップ
以下の地図は、高野山の主要部、壇上伽藍の周辺にある「公共」駐車場マップです。この地図では、主に常設(または準常設)の無料駐車場を表示しています。 地図に表示されているバスの丸いアイコンは「南海りんかんバス」のバス停。緑のラベルが停留所名です。駐車場から路線バスを利用する際にご参照ください。
以下の地図は、奥の院を含めた高野山全域の駐車場マップです。奥の院の入り口にある「一の橋駐車場」のみが有料駐車場で、あとは無料駐車場になります。
これらの常設駐車場以外に、ハイシーズンなどに臨時で開放される駐車場がいくつかあります。
高野山に無料駐車場が多いのはなぜ?
高野山には多くの「公共」駐車場があり、そのほとんどが無料で利用できます。 鉤括弧つきで「公共」駐車場と書いたのは、「町役場駐車場」を除く主要な無料駐車場の多くは、自治体が運営する公共駐車場ではなく、宗教法人「高野山真言宗」が所有する参詣者用駐車場だからです。つまり、厳密には「観光用」の駐車場ではないのですが、一部のモスクやヒンドゥー寺院のように訪問者を「信心があるかどうか」で区別することはできないので、誰でも利用できる事実上の「公共」スペースとなっています。 このことは、高野町の経済活性化や違法駐車・迷惑駐車の削減にも寄与しています。つまり無料駐車場の開放は、高野山真言宗がこの地域で「公」の役割を果たしてきた歴史の名残ともいえます。観光客にとっては、軽く考えれば「無料であちこちに駐車できてラッキー」ということに過ぎない「ほとんどの駐車場が無料」という高野山の特徴も、この「宗教都市」の特殊な成り立ちを理解する材料にもなるのです。 もっとも、近年の環境の変化などを受けて、無料駐車場を有料化する計画も議論されています。この計画については後述します。
ハイシーズンの駐車事情と攻略法
シーズンオフ(平日など)、特に積雪がある冬季は、イベントの期間中を除いて駐車する場所に困ることはほとんどありません。 しかし、高野山が特に混雑するゴールデンウィークなどの連休、夏休みでは、駐車場事情を考えて計画を練る必要があります。通常の土日や祝日でも、場合によっては混み合います。冬季も、大晦日から年末年始にかけては要注意です。 ハイシーズンに高野山に車で行く場合は、宿泊する場所か、町の外にある大規模駐車場に駐車して、路線バスや徒歩で観光するのがおすすめです。 日帰りの場合、最も効果的なハイシーズンの攻略法は、朝の早い時間帯に高野山に到着するようにすることです。目安としては、8時ごろまでには高野山に着けるようにします。例えば大阪から高野山に行く場合は6時までには出発しておくのがいいでしょう(道中で渋滞が発生する可能性があれば、もっと早いほうが無難です)。 多くの駐車場は24時間開放されているので、早朝に到着しても大丈夫です。
目的やシーズン別の「おすすめ駐車場」
一見、選択肢が多いだけに、初めて高野山に車で行く人は、とりあえずどの駐車場を目指せばいいか迷うかも知れません。 場所だけ見ると便利そうな駐車場も、狭い割に競争率が高くて満車の確率が高かったり、有料だったり、臨時駐車場だったりします。 そこで、あくまで判断の目安として、無料の常設駐車場の中から目的や状況別の「おすすめ駐車場」を挙げると、以下のようになります。
多少の混雑が予想されるシーズンに、高野山主要部を巡りたい場合
「金剛峯寺第2」駐車場立地条件だけを見ると、近隣の「金剛峯寺前」駐車場や「霊宝館」駐車場、「中門前」駐車場の方が便利なのですが、便利なだけに競争率が高いです。 この「金剛峯寺第2」駐車場は「最高の立地」とまでは言いませんが、高野山中心部にある常設駐車場の中では広めで、駐車できる可能性が高くなります。高野山観光情報センターで情報を仕入れたり、きれいなトイレも使ったりできるため、初めての訪問で主要な見どころを巡るスタート地点として最適です。 もしここも満車で、「高野山大学」臨時駐車場が開放されている日であれば、そちらが代用になります。
激混みが予想されるハイシーズン
「大門南」駐車場上の「金剛峯寺第2」駐車場や「高野山大学」臨時駐車場も満車になりそうなハイシーズンに高野山に行く場合は、この「大門南」駐車場など中心部から離れた大規模駐車場に車を停めて、山内はバスと徒歩で巡るのがおすすめです。ここは主要バス路線の起点になっているため、接続もスムーズです。「中の橋」駐車場にも似たような特徴がありますが、中の橋駐車場はシーズン中は満車になる可能性もあります。
土日や休日などで、高野山の北部や東部の見どころも巡りたい場合
「高野町役場」駐車場平日以外は駐車できるスペースが増えるため、他の駐車場よりも空いている可能性が高いです。北部はもちろん、東部へのアクセスも比較的便利です。
奥の院を正式なルートで参拝したい場合
「国道371号」駐車場奥の院の正式な入り口「一の橋」にある駐車場は有料です。また、奥の院を一周するのであれば、ここに駐車しても、全体的に歩く距離はそれほど変わりません。
シーズンオフや平日などで、どこもガラガラの場合
目的地の近くの駐車場を利用すればOKです。ただし常設かどうか、24時間開放されているかどうかなど、事前に確認しておくほうがスムーズです。 以下でそれぞれの駐車場の場所と周辺の観光スポット、宿坊などをご案内するので、参考にしてください。
「大門南」駐車場
「大門南(だいもんみなみ)」駐車場は、高野山の南西部、中心から少し離れた場所にある常用駐車場です。「第1駐車場」とも呼ばれます。大門までは徒歩8分~10分ほどです。
大門南駐車場の周辺に主要な観光スポットはありませんが、注目ポイントは、ここに南海りんかんバス・千手大門線の終点「大門南駐車場」停留所があることです。 そのため、特に中心部の駐車場が混雑するシーズンは、日帰り観光の方や車中泊の方にとって、この大門南駐車場が格好の拠点になります。ここに車を駐車しておいて、山内の観光スポットはバスと徒歩で見て回ることができるためです。 大門南駐車場には、普通乗用車であれば200台を駐車できるスペースがあります。
「お助け地蔵尊前」(臨時)駐車場
「お助け地蔵尊前(おたすけじぞうまえ)」駐車場は、高野山の南西エリア、大門南駐車場の少し北西にある駐車場です。大門までは徒歩5分ほどです。
もともと常設駐車場でしたが、4月~11月の土日・祝日などに開放される臨時駐車場になっています。 路線バスを利用する場合は大門南駐車場に駐車するほうが便利ですが、徒歩で中心部に行く場合はこちらの方が近いです。 大門の観光が目的の場合も、ここに駐車するのが選択肢に入ります。 駐車場の名前の由来になっている「お助け地蔵尊」は、熊野で一人の老人に助けられ、この高野山に連れてこられたという伝承があるお地蔵様です。その恩返しに、みんなの願い事を一つずつ聞いてくれるそうです。 お助け地蔵尊前駐車場には、普通乗用車であれば32台を駐車できるスペースがあります。
「愛宕第1」駐車場
「愛宕第1(あたごだいいち)」駐車場は、高野山の西部エリア、壇上伽藍の西側にある常用駐車場です。「愛宕駐車場」とも呼ばれます。壇上伽藍までは徒歩3分~5分ほどです。
愛宕第1駐車場には、普通乗用車であれば38台を駐車できるスペースがあります。駐車料金は無料で、常時開放されています。 近くにある見どころは二つの弁天社です。また、この辺りにはゲストハウスや宿坊の他に、食事処や土産物屋もあります。壇上伽藍の北西側にある宿坊、正智院、宝城院、西禅院にも比較的近いです。 まずはバス通りの北側を中心にご案内します。バス通りの南側については、次の「愛宕第2」(臨時)駐車場をご参照ください。
「愛宕第2」(臨時)駐車場
「愛宕第2(あたごだいに)」駐車場は、高野山の西部エリアにある臨時駐車場です。「愛宕第1」駐車場とはバス通りを挟んで反対側にあります。壇上伽藍までは徒歩3分~5分ほどです。
愛宕第2駐車場は「臨時駐車場」ではありますが、一部の期間を除くほぼ毎日、19時ごろまで利用できます。普通乗用車であれば30台~40台を駐車できるスペースがあります。駐車料金は無料です。 「愛宕第2」周辺(バス通りの南側)には以下の宿坊や食事処、土産物屋があります。
「中門前」駐車場
「中門前(ちゅうもんまえ)」駐車場は、高野山の西部エリアにある常用駐車場です。「壇上伽藍駐車場」とも呼ばれ、壇上伽藍の入り口、中門の正面にあります。金剛峯寺までも徒歩8分~10分ほどで行けます。
中門前駐車場は観光にはきわめて便利な場所にあり、しかも駐車料金は無料で、常時開放されています。 しかし駐車スペースは常設駐車場の中では最も狭く、普通乗用車は18台しか駐車できません。ハイシーズンの日中は、運が良くなければ空いていないかもしれません。 周辺には以下の観光スポットや宿坊、食事処、土産物屋があります。
「霊宝館」駐車場
「霊宝館(れいほうかん)」駐車場は、高野山中心部の南西側にある常用駐車場です。こちらも観光に便利な場所にありますが、原則としては高野山霊宝館を訪問する人のための駐車場です。金剛峯寺までは徒歩5分~8分ほど、金剛三昧院までは10分~15分ほどです。
霊宝館駐車場には、普通乗用車であれば31台を駐車できるスペースがあります。駐車料金は無料で、常時開放されています。 周辺には以下の観光スポットや宿坊、食事処、土産物屋があります。
「金剛峯寺第2」駐車場
「金剛峯寺第2(こんごうぶじだいに)」駐車場は、高野山中心部の南側にある常用駐車場です。金剛峯寺までは徒歩7分~10分ほど、金剛三昧院までは5分~7分ほどです。
金剛峯寺第2駐車場には、普通乗用車であれば72台を駐車できるスペースがあります。駐車料金は無料で、常時開放されています。 この「金剛峯寺第2駐車場」は、近隣の「中門前駐車場」や「霊宝館駐車場」「金剛峯寺前駐車場」に比べると主要な観光スポットまでは少しだけ遠くなりますが、観光や参拝の拠点にするのにおすすめの駐車場です。 他の駐車場よりも駐車スペースが広く、空いている可能性が高い上に、隣接している「高野山観光情報センター」で情報を仕入れたり、きれいなトイレを利用してから観光・参拝を始めることができるからです。
「金剛峯寺前」駐車場
「金剛峯寺前(こんごうぶじまえ)」駐車場は、高野山中心部にある常用駐車場です。
金剛峯寺前駐車場がある場所は高野山の交通の要所。金剛峯寺や壇上伽藍は至近距離にあります。 さらに、上の地図を見れば分かるように、高野山の東部には常設・無料の公共駐車場が少ないため、「小田原通り」周辺をまわる際も、ここを利用するのが便利です。 利便性が高いということは、競争率も高いということ。そのためシーズン中は、金剛峯寺前駐車場はかなり混雑します。その場合は、高齢者などが利用しやすくするためにも、可能であれば少し南にある「金剛峯寺第2」駐車場などに駐車するほうがいいかも知れません。 金剛峯寺前駐車場には、普通乗用車であれば39台を駐車できるスペースがあります。駐車料金は無料で、原則として常時開放されています。ただし寺院の催事などがある時は、駐車できなくなることがあります。 周辺には以下の観光スポットや宿坊、食事処、土産物屋があります。
小田原通り周辺
以下は高野山の東側の「小田原通り」の周辺にある見どころや宿坊寺院です。このエリアには無料の「公共」駐車場がなく、「金剛峯寺前」駐車場が最寄りの駐車場になっている場合が多いので、合わせてご紹介します。
「高野山大学」臨時駐車場
「高野山大学(こうやさんだいがく)」駐車場は、高野山中心部の南側にある臨時駐車場です。金剛峯寺までは徒歩3分ほど、金剛三昧院までは8分~10分ほどです。
高野山大学駐車場は、平日は高野山大学の教員や学生などが利用していますが、4月~11月の土日・祝日などは一般にも開放されます。 普通乗用車であれば75台を駐車できるスペースがあります
「高野山小学校」臨時駐車場
「高野山小学校(こうやさんしょうがっこう)」駐車場は、高野山の南部エリアにある臨時駐車場です。
高野山小学校の駐車場も、4月~11月の土日・祝日などに一般に開放されることがありますが、北側にある高野山大学駐車場よりも頻度は低いです。雨天の場合も利用できなくなります。 ここには普通乗用車が72台駐車できるスペースがあります。
「高野町役場」駐車場
「高野町役場(こうやちょうやくば)」駐車場は、高野山の北部エリアにある常用駐車場です。徳川家霊台までは徒歩6分ほど、女人堂までは15分ほどです。
高野町役場の駐車場は、平日は役場の職員や利用者が使っていますが、それとは別に観光客向けにも、普通乗用車46台分のスペースが提供されています。 土日や休日などはそれ以外の駐車スペースも開放され、合計で117台が駐車できるようになります。 高野山の北部エリアの見どころを回る際はもちろん、東部や中心部に行く場合も、土日・休日であればおすすめの駐車場です。 高野町役場駐車場も、駐車料金は無料です。ただし利用可能時間は午前7時から夜の10時までとなっています。 周辺には以下の観光スポットや宿坊、食事処、土産物屋があります。
高野山北部の見どころと宿坊寺院
世界遺産の「徳川家霊台」や「女人堂」など、少し離れた場所にある北部の見どころに行く場合も、「高野町役場」駐車場の利用が便利です。
「一の橋」駐車場
「一の橋(いちのはし)」駐車場は、高野山の東部エリアにある有料駐車場。高野山宿坊協会が運営しています。
一の橋駐車場には、普通乗用車が8台駐車できるスペースがあります。 高野山の駐車場はほとんどが無料駐車場ですが、この駐車場は有料になっています。 駐車料金は、小型車・普通乗用車の場合最初の1時間は400円。その後30分ごとに150円加算されます。中型車は1時間以内600円、その後30分ごとに200円です。 営業時間は、午前9時から午後16時半まで。ただし料金や営業時間は変更になる可能性もあります。 一の橋は奥の院の正式な入り口でもあり、有名な武将たちの供養塔にも近い場所にあります。奥の院を2時間見て回るなら700円、3時間なら1000円かかることになりますが、その出費を気にしないのであれば、ここに駐車してもいいかも知れません。 周辺には以下の観光スポットや宿坊、食事処、土産物屋があります。
「国道371号」駐車場
「国道371号」駐車場は、高野山の東部エリア、奥の院の南にある駐車場です。一の橋と中の橋の中間地点に近く、国道沿いの空いているスペースを駐車場にしたものです。
国道371号駐車場は、普通乗用車であれば51台を駐車できるスペースがあります。駐車料金は無料です。 一の橋から正式ルートで奥の院を参拝する場合、ここに駐車するのが有力な選択肢になります。また、次にご紹介する「中の橋」駐車場が空いていない場合の代用にもなります。 「国道371号」駐車場の周辺は以下のようになっています。
「中の橋」駐車場
「中の橋(なかのはし)」駐車場は、高野山の東端、奥の院の南にある立体式の常用駐車場です。
中の橋駐車場には、普通乗用車であれば186台を駐車できるスペースがあります。大型バス16台、小型バス10台も駐車できます。西端の「大門南」駐車場と並ぶ巨大駐車場です。路線バスの終点があり、車とバスを組み合わせて観光するのに便利なことも、「大門南」駐車場との共通点です。 駐車料金は無料で、常時開放されています。ただし、この「中の橋」駐車場は奥の院の観光に便利で、食事処や土産物屋もあるため、混雑時は満車になってしまうこともあります。 その場合は少し西にある「国道371号」駐車場や、南にある臨時駐車場などが代用になります。 周辺には以下の観光スポットや宿坊、食事処、土産物屋があります。
「桶谷」臨時駐車場
「桶谷」臨時駐車場は、「中の橋駐車場」の南にある新しい臨時駐車場です。奥の院まで歩くと15分ほどの距離です。
「国道371号」駐車場と同じ用に国道沿いのスペースを駐車場にしたものですが、こちらは4月~11月の休日などに開放される臨時駐車場となっています。
「大師陀羅尼助」臨時駐車場
「大師陀羅尼助(だいしだらにすけ)」駐車場は、「中の橋駐車場」の南にある駐車場です。奥の院まで歩くと20分ほどの距離です。
50台の駐車スペースがあり、4月~11月の休日などに開放されますが、利用時間は16時までのことが多いので注意が必要です。 「阿羅尼助(だらにすけ)」は、修験者に愛用された「万能薬」が由来の胃腸薬です。苦味があるため、徳川家康の師、天海が長寿の秘訣だと語った「だらに」を唱える際、睡魔を防ぐために使われたことが由来だとも言われます。
「下水処理場」臨時駐車場
「下水処理場」臨時駐車場は、「大師陀羅尼助」臨時駐車場のさらに南にある臨時駐車場です。
「下水処理場」臨時駐車場には42台の駐車スペースがあり、「大師陀羅尼助」臨時駐車場と連動して4月~11月の土日などに開放されます。こちらも利用時間は16時までのことが多いです。
「スカイライン」駐車場
「スカイライン」駐車場は、高野山の南東の出入り口にある駐車場です。かつて「高野龍神スカイライン」の料金所があった場所で、バスの待機所にもなっています。奥の院まで歩くと25分ほどの距離です。
利用可能なのは4月から11月までで、15台のバスを駐車するスペースがあります。
高野山の無料駐車場が有料化?さらに入山料も?
ここまでご紹介してきたように、高野山では、町内の主要な駐車場のほとんどが無料で利用できます。これは国内外から多くの人が訪れる世界遺産では珍しいことで、観光客から見ると有り難いばかりです。 高野町役場の駐車場もありますが、多くの駐車場を無料で使わせてくれているのは、土地の所有者である宗教法人「高野山真言宗」です。その背景としては、高野山全体が寺院のようなものであり、参詣者から駐車料金を徴収するべきではないという考えが残っていることや、駐車場を有料にして「参詣者用無料駐車場」ではなくなると、「宗教法人法第3条」の規定により固定資産税を課税される可能性がある、といった事情も指摘されますが、空海以来の「来る者は拒まず」の思想が現れているとも考えられます。 しかし2019年2月、高野山真言宗はそれらの無料駐車場を有料化する方針を発表しました。少子化などにより「高野山大学」や「高野山高等学校」の運営が厳しくなり、維持費を工面する必要が出てきたからだといいます。中世には「南山教学」の中心地であり、比叡山と並ぶ学び舎だった高野山ですが、高野山大学が文学部人間学科の廃止に追い込まれるなど、その伝統が危機に陥っているようです。 主な無料駐車場がすべて有料化されたら、かなりの収入になると思われます。料金次第ですが、仮に1回の駐車につき千円徴収する場合は、1億円以上の収入になると試算されているといいます。観光客が多ければ、固定資産税を払っても十分元をとれ、学校の維持費にまわせそうです。
資金の問題だけではない可能性もあります。「月刊住職」2019年5月号によると、真言宗ではオーバーツーリズムについて議論になっていたといいます。もともと高野山を訪れるのは弘法大師・空海を信仰する参拝者が中心でしたが、世界遺産に指定されたことで外国人を含めた観光客が増え、マナーなどをめぐるトラブルが問題になっていたようです。また、本山ではなく福岡県にある高野山真言宗の寺院の話ですが、「月刊住職」には、外国人団体客の入場を断るケースも出てきていると書かれています。 信徒ではない観光客が増えすぎると厳かな雰囲気が失われるため、多少は制限しようという意見も出てきているのでしょうか。電車などで高野山に来た人に対しても、入山料を徴収するという計画が議論されてきました。 これは高野山や日本の観光地に限った話ではありません。ちょうど同じ時期、高野山以上に世界中からの観光客が押し寄せていたイタリアのヴェネツィアも、オーバーツーリズム抑制のため「町への入場料」を徴収することを決めています(その後延期)。 高野山の無料駐車場は2020年春からの有料化が決まっていましたが、山内では駐車場の有料化に反対する意見もありました。議論の結果、方針が転換され、駐車場の有料化はいったん白紙撤回されました。学校の財源を確保する必要があるというのは共通認識ですが、まずは別の手段を模索しようということになったのです。入山料を徴収する計画も、同様に白紙撤回されました。ちょうどこの頃から新型コロナウイルスの流行が始まり、観光客(特に外国人観光客)が激減していました。 新興国の経済発展によって観光客が激増し、オーバーツーリズムが世界中で問題となる中で議論されてきた無料駐車場の有料化計画、そして入山料の徴収計画。 いったん白紙撤回されたとはいえ、再び観光客が増えれば、そして12世紀の伝統を持つ高野山の教育を維持するための新たな財源を見つけることが難しければ、再び駐車場の有料化が計画される可能性も否定はできません。